怜士の本棚

不定期に読んだ本の記録や、感想を載せていきます。ファンタジーやミステリー系が多いです。たまに、日記のようなものを書きます。

『浮雲心霊奇譚 菩薩の理』神永学

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浮雲シリーズより第三巻、『菩薩の理』です。

菩薩、と聞いて何を思い浮かべますか?地蔵菩薩とか六観音菩薩とか……。

褒め言葉として菩薩のような顔とかもありますしね。

基本的にはポジティブな意味の言葉ですが、果たしてこの物語の菩薩の正体とは……。

 

収録作品に『地蔵の理』とありますが、言葉のとおり、お地蔵さんの周りで起こった心霊現象のお話です。

と、言っても浮雲の解釈的には、地蔵菩薩はその地のエネルギーの現れであるだとか、道祖神が変化したもの、と考えているようで、人に害なすものではない、と語っています。

まぁ、お地蔵さん、と言われると、現代でいえば事故現場の魂を鎮めるためだとか言われていて、ちょっと不気味ですし、お地蔵さんはネガティブな都市伝説とかもあったりします。

僕も解釈的には浮雲に近いものを持っています。彼らはその場所から人々を見守るだけ、一番身近な存在の菩薩であると思っています。

 

まぁ、そんなこんなで時に信仰を集めるお地蔵さんですが、物語に出てくるお地蔵さんは、なんと首なし地蔵なのです。

普段は神仏を信じない方でも、日本で生まれ育った方なら首なし地蔵は少しやばいのでは……というのがわかるかと思います。

触らぬ神に祟りなしとはいいますし、しかも進んでお地蔵さんの首を落とすなど罰当たりな、というのは誰でもわかることですしね。

この首なし地蔵に纏わる心霊現象から、もう一人の闇に潜む、呪術師が浮雲たちの前に立ちはだかります。

さてその人物とは……是非とも実際に読んで確かめてみてください。

 

この本には3編収録されていますが、その中では『死人の理』が一番好きです。

身分違いの恋、というものが出てきますが、これを深いところまで追うと、既読の方なら何を言いたいのかわかっていただけるかと思います。

今でこそネタの一つとして取り上げられますが、当時の人々からしてみれば大問題です。

題材は違いますが、叶わぬ恋といえば『曽根崎心中』とかが有名です。当時の人々はどんなに好いていても、身分の違いや、家の決めた相手と結婚する事が多かったから、このような事件も起こってしまいました。

それ故に、八十八も伊織も苦悩しているわけです。

それを娯楽として読んでしまう僕もいますが、当時の人々を思ってやるせない気持ちになる僕もいます。

 

ここまで『浮雲心霊奇譚』シリーズの感想文を書いてきたのですが、実はこのシリーズに入った途端、文章が饒舌になってしまいました。

といっても理由は単純で、僕がただ歴史系が好きだから、っていうのがあります。でも、時代小説は読んでないから変わり者です。

まぁこれもちゃんとした理由があって、僕が好きなのはあくまで日本史、とされている大筋に沿っているもの、であってフィクションを付け加えた時代小説はあまり好きでは無いのです。

ただ、理由はそれなので、実は伝記とかは時々読みます。小学生の頃はまんが伝記とかを狂ったように読んでましたからね、その後歴史をやって杉原千畝とか津田梅子が全然出てこなくてびっくりしましたけど。

 

そうは言いつつも、実はようやく時代小説にも手を出してみるかな、と決心をしているところです。

といっても大河ドラマ原作の『西郷どん』と、コミカライズ版の『軍師官兵衛』辺りですが。

僕は誰かが書いたフィクションより、その人の生き様を、なるべく史実として知りたいだけなんです。

その代わり、大河ドラマとかでも史実かフィクションか、を調べて見抜かなくてはいけないですけどね。

 

今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

また明日お会いしましょう。