怜士の本棚

不定期に読んだ本の記録や、感想を載せていきます。ファンタジーやミステリー系が多いです。たまに、日記のようなものを書きます。

『桜風堂ものがたり』村山早紀 読了

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この本も、初めに読んだのは高校生の時でした。特に何も考えず、というより『桜』というワードに弱いので、それに惹かれて手に取った記憶があります。

あらすじから、本屋さんのお話だとわかってはいましたが、読んで見てびっくり、心の底から温まるようなお話でした。

 

この本を手にした時期というのが、高校生最後の大会の季節であり、とある大切な人と永遠の愛お別れをしてしまうと宣告を受けてしまった時期でした。正直言って、僕の短い人生の間で一番暗い時期ではなかったのでしょうか。

当時はストレスからあまり食欲も感じず、ですが突然お菓子を沢山食べ過ぎて、荒れた食生活のお陰もあってか凄く胃の調子が悪かったです。

今いえば、誰かに相談すれば、とか友達が難しくとも保健室という手があったのではないかと思えるのですが、高校には自分の気持ちを正直に話せるような友だちはいませんでしたし、家族に不安な気持ちを打ち明けようにも、永遠の別れを悲しんでいるのは僕だけじゃありませんから、それを話すというのを躊躇っていました。

 

その時に出会ったのが『桜風堂ものがたり』です。主人公・月原一整は、不幸な出来事から自分の居場所だった所を、大切な居場所だった故に飛び出し、小さな田舎の町で奇跡を起こします。

最初に読み終えた時は、「ああ、幸せってこういうことなのか」と、深い海の底に沈んで冷えきっていた心を、じわじわと暖まらせてくれました。

こんな綺麗事を言うのはあまり好きではないのですが、永遠の別れに対する気持ちというのが、なんとなく和らいだ気がしました。

こんな暖かい気持ちにさせてくれる本は、ずっと手元に置いておきたい、そう思って図書館で借りて読んだ本を返却したその帰り道に、この本を購入しました。

 

僕は作中にも出てくる、そして宣伝としても使われている言葉『涙は流れるかもしれない。けれど悲しい涙ではありません』がとても好きです。

上手く言葉に出来ませんが、実際に泣いた訳ではなくても、泣きたくなるような気持ちになってもこれは幸せだから泣きたくなるのだろうか、という気持ちにさせられました。

なんでしょう、ただただ優しくて美しくて幸せなこのお話を、こんなに幸せがあってたまるかと拒絶しそうになるのですが、このお話はただ荒んだ心を、母親が赤ちゃんをお包みで包むようにぎゅっと抱きしめて愛を注ぎ込んでくれるのです、この物語は。

 

実はこの本を購入した後に、村山早紀さんが他にどんな本を書かれているのだろうかとネットで調べてみたのです。

するとその中に、小学生の時に読んで以来、ずっとお気に入りだったお話『天空のミラクル』が並んでいて、凄く驚きました。

『天空のミラクル』は、『桜風堂ものがたり』よりもずっとファンタジーのお話なのですが、それでも『ここにいていいんだよ』というように、優しく語りかけてくれる本なのです。

 

暗いニュースの多い中で、底なしの明るい物語を生み出し続けてくれる村山早紀さんの本は、僕の心の中を照らしてくれる灯台のような存在です。

どんなに心が疲れていても、お話を読むと『幸せってこういうことなんだ、もうちょっとだけ頑張ってみるか』という気にさせてくれます。

とは言いますが、頑張りすぎも禁物ですね。あまり自分を追い詰めすぎるのも、溜め込みすぎるのも。

 

最後までお読み頂きありがとうございます。

明日の感想も、村山早紀さんの作品です。

また明日お会いしましょう。