怜士の本棚

不定期に読んだ本の記録や、感想を載せていきます。ファンタジーやミステリー系が多いです。たまに、日記のようなものを書きます。

『心霊探偵八雲9,10』神永学 読了

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いよいよ『心霊探偵八雲』シリーズもラストスパートです。

今のところシリーズの中では1番心に刺さりますが、優しさもある、と言った感じのストーリーでした。

 

心霊探偵八雲9 救いの魂』

八雲は、かつて高校の同級生だった蒼井秀明の妹の生霊を目撃した。

彼女は八雲に「深い森」と訴えていたが、その真意はわからなかった。

それと同時に、警察を懲戒免職され、心霊絡みの探偵をしていた後藤の元に、遊び半分で樹海に入った後、死体を発見してしまい、その後電話がかかってくるようになってしまったという、大学生からの依頼が入り込んだ。

そしてその樹海では、両眼の赤い男の目撃情報があるというー。

 

心霊探偵八雲10 魂の道標』

宿敵・七瀬美雪に左眼を傷つけられ、魂を見ることが出来なくなっていた八雲は、自分の存在価値を見失っていた。

そんな時、妹の奈緒が何者かに取り憑かれてしまい、行方不明となってしまう。

奈緒に取り憑いた魂の正体とは、そしてとあるマンションで起こっている心霊現象との関わりとはー。

 

9も10も、中々キツイなぁ、と思ってしまうお話でしたね。

少しネタバレにはなってしまうのですが、心霊現象を追っていく道中で、八雲は樹海へと連れ去られ、放置されてしまいます。

察しのいい方は既に気づいておられるかと思いますが、樹海とは青木ケ原樹海、所謂自殺の名所と言われているところです。

自殺、という選択肢をとってしまう方は、深い悲しみ、強い憎しみ、とても常人が推し量る事が出来ない程の失意の底に沈んでいます。

そんな状態で亡くなった方々の、無念の魂がさまよい続ける樹海に、死者の魂を見ることができる八雲が立ち入ってしまったらどうなるのか。

僕達のような、現実世界に生きる人間には分かりにくいとは思いますが、街の中の喧騒が制御する事も出来ずに、どんどん耳の中に流れ込んでくる状況とでも言うのでしょうか。耳を塞いでいるはずなのに、それすらも突き抜けてくる騒音、きっとこれだけではないでしょう。

これはヒロインである晴香が時々「八雲君は優しい」と口にしています。作中でこそ、無愛想な人間といった感じに描かれはしていますが、彼の根の部分は、彼女が感じているように「優しい」のです。

それ故に、樹海での死者達の失意の叫びというのは尚更彼の心を蝕んでいったのではないでしょうか、まあ、あくまで僕の勝手な推測ですけどね。

 

また、10巻の物語では自分の存在価値について語られています。

八雲は自分が「見える」眼を持っているからこそ、それを利用する人間がいて、自分の価値というものは「赤い眼」だけしかない、と思っていました。

でも正直、自分が人間として好んでいる人間に、「僕とつるんでいるのは周りの目がそうしろと言っているからだろ」とか言われると、凄く悲しいですし、なんでそんな事を言うのか、と憤慨したくもなります。

というのもまあ、僕が似たような経験をしているから、というのもあるのですが。僕の場合は八雲側です、当時仲がよかった友達に似たような事を言ってしまって、後から思い返してみれば、学校が別になっても一緒にいてくれている友達にそんな事を言うのは凄く失礼ではないかと思って、すごく反省しています。

正直、僕の自分に対する存在価値や自己評価は凄く低いです。

ですが、その中で数少ない友人達がいてもいいんだよ、と言葉に出しては言いませんが、笑顔で迎えてくれるので、どうにか今日も存在していられるような気がします。

 

キャラクター文庫にあたる本は、純粋に娯楽だけの本だと思っていたので、まさかこんなに重い話になってしまうとは思いませんでした。

孤独を恐れるが故に、孤独を愛する、何かしらで傷ついた人間は、そうやって防衛する事で生きていこうとしますが、実際、人間は孤独では生きていけません。

どこかで誰かが、気づいていなくても、自分を支えてくれています。

 

なんか説教臭い感じになってしまいましたが、実際これは僕から自分に向けた説教みたいな感じです。

せめて人間らしくあろうとする僕から、現実を嫌う自分へのメッセージです。

 

9,10を読み終えて何日か経っているのですが、あらすじを見て11巻に手を出すのをちょっと躊躇ってしまっているので、『浮雲心霊奇譚』を読むか『ANOTHER FILES』を読むか、はたまた別の本を読んでからにするのか。

ちょっと今、読書の手が止まっているので全く違うテイストの本を読んでお口直し、でもいいですね。

 

今日も最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

また明日お会いしましょう。