『心霊探偵八雲 ANOTHER FILES 裁きの塔』神永学 読了
ANOTHER FILES 三作目、前作で石井さん、後藤刑事に続いて、スポットライトが当てられるのはヒロイン・晴香ちゃんです。
といっても、晴香ちゃんの過去については本編でやっているので、2人のような巻き込まれ方ではなく、まさかの容疑者として巻き込まれてしまいます。
神永学先生の作品では「先入観があるから物事を間違って捉える」という言葉がよく使われています。
この作品はその台詞がよく活きている作品だと思います。
八雲がその事についてもかなり悩んだ話でもありますし、事件の真相を知った読み手でも、あっそういうことか、とも納得出来るものです。
要は推理をする時はなんでも疑ってかかれ、ってことでしょうかね。
前述の通り、作中で八雲はかなり苦悩します。
石井さんも、後藤刑事も晴香ちゃんがやるはずはない、と断言しきっていますが、彼には何故そこまで言い切れるのか、人を信じられるのか、というのが全くわかりませんでした。
それは彼の生い立ちを考慮すれば仕方の無い事かもしれません。
しかし八雲は、後藤刑事に叱咤されたことで考えを改めます。今彼女の事を知らなくとも、これから知ればいい、その為にはこの事件を解決しなければならない。
神永学先生は、このシリーズを通して『斎藤八雲』という一人の青年の成長を描きたかったと言っています。
この作品は、外伝ではありますが、八雲の成長の断片が見えた物語だと思っています。
(注・先生の発言をどこで見たのか引用を引っ張って来ようと思いましたが、どこで見たのか忘れてしまいました……。見つけられたら追記します。)
無条件に人を信じること、というのは一見簡単そうに見えて、人によってはとても難しい事です。
生活環境故に、人間不信となってしまった人ならその気持ちがわかるとは思うのですが、普通の恵まれた家庭で育った人には少しわかりにくいかと思います。
信じていた人に裏切られた経験があるなら尚更です。
八雲もそんな環境で育ってはいますが、周りの人々の、無条件の信頼により、少しづつ、少しづつ彼の凍った心が溶けています。
ですが、そこに漬け込んでくるのが両眼が赤い男です。
今までならただ憤ればよかったのですが、『心霊探偵八雲10 魂の道標』を読んでしまったらそんな事も言えないんですよね……。
さて、3日連続ANOTHER FILESでしたが、明日の感想文をどうしようかちょっと悩んでいます。
読了順に載せるなら次は『万能鑑定士Q』シリーズですが、先程読み終えた本をまだホクホク暖かいままで感想を書いてしまうか悩んでいます。
というより、感想文が読んでる本からどんどん置いていかれているので一日に2つぐらい更新しないと追いつけないのでは?って感じです。
元々貯金のつもりで少し前に読んだ本を書く、って事にしてたのですが、八雲シリーズに手を出した時点でとんでもなく差が開いてしまいました。
物語が面白いと、どんどん読んでしまうからダメですね……。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
また明日お会いしましょう。